少子化=日本社会存立の危機を直視せよ

 丁度一年前、一年間に出生した子供の数が100万人を割ったというニュースがメディアの話題となった。戦後の最も多かった時は年間270万人もいた出生児の数がついに100万人を割り、97万人台となったのである。ところが、あれから一年、まだ公式の発表はなされてはいないが、昨年一年の出生児数は早くも94万人を割り込むという予測が出ている。このペースでいけば、今年の暮れは90万人割れという話にもなりかねない。三年間で何と10万人出生児数が減少するという話だ。

※オフィシャルWEB運営委員会・注記……本稿校了後の12月22日、厚生労働省は2017年人口動態統計年間推計を発表。2017年生まれの出生数は94万1000人となる見通しだという。

 これはどう考えても、日本社会の存立の危機であろう。山東昭子参院議員が党の役員会で「子供を4人以上産んだ女性を厚生労働省で表彰することを検討したらどうか」と発言したことが先日メディアの一斉批判に晒されたが、「厚生労働省で表彰」という発想は少々センスに欠けるとしても、これを相も変わらず戦前の「産めよ殖やせよ」と結びつけ、バッシングで口を揃える様は、どうしていつもこうした定型的な反応しかなし得ないのか、とウンザリする思いだった。「女性が女性を分断するな」という批判もあったが(東京12・7夕刊)、そんな問題ではないだろう、と思った次第だ。

 この少子化問題に対する対策の待ったなしである所以、そしてそのめざすべき内容については、今号でも山崎史郎氏に語っていただいているが、筆者としてはまず国民がこの現実をかかるイデオロギー抜きに、率直に直視するところから始めるのがまず肝要ではないか、と考えている。というのも、このまま何もできないまま過ごせば、更に50万人を割り、30万人を割る時代がいずれ近い将来、確実にやってくるわけで、それでもまだイデオロギーを振り回すのか、といいたいからである。これは乗っている船がどんどん沈み始めているのに、その船の上で「乗員の権利」に口を出すな、と騒いでいるような話だと思うからだ。それが大切であるのはまさにその通りだが、船が沈没したのでは元も子もない。まずそれを回避するための努力に注力すべき時であろう。

 その時大切なのは、やはり何といってもこの危機の現実に対する認識ではないか。この少子化の流れが今後このまま続けば、果たしてどんなことになるか。われわれの社会保障の問題にしても、地域社会存続の問題にしても、あるいはもっと具体的に警察、消防、自衛隊員等のなり手といった問題にしても、話はこの現実の直視から始まるといえるからだ。若者の数がどんどん減っていけば、これら全てが成り立たなくなるのだ。

 この危機の認識の共有ができれば、実は対策はまだあるように思う。要はこの出生児数の減少にまずストップをかけ、更に増加に転じさせるための方策だ。簡単ではないが、この日本社会がこの課題に向け、挙って「本気で向き合う」という雰囲気にさえなれれば、具体策は出てくるように思うのだ。その第一は若者ができるだけ早く結婚し、子供をもうけてくれるような社会を作ることであろうが、そのためにはこの社会が可能な限り彼らを見守り、祝福し、バックアップする国になるということであろう。

 話は変わるが、この少子化の問題は中小企業の後継者不在による廃業の問題もまた起こし始めているとの話を、先日ある税理士から伺った。業績が悪くなって潰れるのではない。後を継いでくれる子供がいなくて「黒字廃業」になるというのだ。経産省の資料によれば、こうした廃業がこのまま続けば、「25年頃までの10年間で650万人の雇用が奪われ、約22兆円の国内総生産(GDP)が奪われる可能性がある」との予測すらあるらしい(河合雅司、産経11・19)。大変な問題であろう。

 今こそ皆が、この認識を共有すべき時ではないか。(日本政策研究センター代表 伊藤哲夫)

〈『明日への選択』平成30年1月号〉